平成30年度記念講演会報告

若生先生の仕事を生みだす行動力―記念講演「造園からジャンルを切り拓く―歴史をつくろう―」を聴いて

株式会社公園マネジメント研究所 浦 真一

 国際造園研究センターの講座や見学会、そしてそのあとの懇親会は、貴重な学びと先生方、先輩方とのお話の機会を提供してくれます。毎年6月には総会が開催されていますがこのときにも必ず学びの機会が用意されます。今回の若生謙二先生の記念講演でうかがったお話を会員の皆様に紹介するようにとご依頼をいただきましたので、少しご紹介させていただきます。

 若生先生は、生態展示の手法による動物園設計の第一人者ですが、今回の記念講演のテーマは「造園からジャンルを切り拓く―歴史をつくろう―」ということであり、これまでの動物園設計の経験を踏まえ、造園界のこれからの広がりについてお話しくださいました。

 印象的なのはまず冒頭、今回のテーマについてです。なぜ動物園設計の実績ではなく、造園界の仕事の拡大なのか、それは仕事をただ待っているだけで減ったと嘆くのではなく、仕事は自分でつくるものだという攻めの姿勢の現れです。まさに若生先生は動物園設計を各地で進めるなかで、これを実践されてきたのです。頼まれてから動くのではなく、時代に合わない動物園改修が行われようとしているのを知れば、まずは駆けつけてアドバイスをするという行動力こそが、全国の動物園の魅力的な展示空間を創りだしています。

 先生の動物園設計の基礎には、若いころからの公園などにみられる手法の研究があるとおっしゃいます。基礎となる歴史的な研究がかたまったとき、その歴史的な手法が動物園展示にも共通することをみいだされ、歴史研究から設計へと着手されます。研究畑と設計畑は別物として認識されることが多いのですが、このつながりをあらためて説明していただくと目から鱗が落ちる思いでした。

 そしてもうひとつは、会社員だったころに掲載された動物展示の記事がきっかけとなって今につながっているというお話です。当時は動物園とはまったく関係のない企業にお勤めでしたが、海外勤めで動物の生息環境への興味から仕事の合間に動物の実際の生息空間を見にいかれ、執筆もされて夢をあきらめずに追いかけられていたとのことで、情熱と継続の大切さを痛感させられました。

 今回も例にもれず講演後の懇親会でも学びの時間を戴いたわけですが、ここでもうひとつ伺うことができました。先例がものをいうこの世の中で、最初の業績となった天王寺公園のきっかけは何だったのでしょう。それは運がよかったとのことでした。その運も、情熱と継続と、そうして築きあげてきた人間関係のうえにこそ、巡ってきたのだろうなと感じざるにはいられませんでした。今後私も、先生からアドバイスをいただいたとおり、いつか研究段階から展開できるよう、いま進めていることを継続していこうと思います。